続 若草物語

続 若草物語 (角川文庫)

続 若草物語 (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

メグの結婚そして出産から、姉妹の人生はついに花開き始めた。ジョーは好きな物書きを続けながら一家の長として姉妹の面倒を見、一方で盟友ローリーからの求愛に悩んでいた。エイミーは少女らしさを残しつつ、慎みや思いやりを学び憧れのレディへの道を突き進む。そしてベスは、弱りゆく体の声を自ら聞きながらも、心安らかに、自分にとっての幸せを見いだしていた。姉妹それぞれが真実の愛と人生をみつける、感動のドラマ。


 kindleで読了。
 ネタバレあり。
 前巻から3年後、前巻末で結婚を約束したマーチ家の長女メグとジョン・ブルック(ローリーの元家庭教師)の結婚式の話から物語は始まる。
 三女ベスは前巻で病から治ってよかったで終わったかと思いきや、あれから身体が弱くなってしまった。それもあって次女のジョーは彼女の世話を焼いていて、そして文学の仕事も引き続きしている。そしてエイミーは優雅で上品な世界への憧れを持っているが背伸びした少女ではなく、美術を学んでいる上品で立派な娘さんへと成長している。
 ローリーは順当に大学に行って、四姉妹との付き合いで花開いた愉快で茶目っ気のある性質で大学の仲間たちから好かれている。ローリーは最初に登場したときは寂しそうな大人びた少年という印象だったが、次第に四姉妹との親しい付き合いで子供っぽい側面が出てきた。そのように子供っぽい振る舞いをできるような友を得たのが最近だからなのか、それとももともとの性質だったのかはわからないが、今は子供っぽい稚気を感じられる青年になった。
 マーチ伯母さんはメグにジョン・ブルックと結婚したら1セントもやらないと言い放った手前、その怒りが収まって結婚するときに贈り物を別の人経由で渡している。ちょっとひねくれているけどやっぱり善い人だね。
 ジョーとローリーの関係は相変わらず親しい友達レベルで、ローリーは関係の進展を求めているがそうはなっていないという状態。
 最初の方ではメグの結婚式と現在の四姉妹の様子、そしてメグが結婚生活や双子の子供が生まれたことによる新環境で直面する新たな問題に直面し、それを解決するために変えたことについての話などが書かれる。
 エイミーは伯母についてヨーロッパに行くことになって、そこで以前から望んでいた令嬢のような生活を送ることになって、初めてのヨーロッパをエンジョイしていた。そうはいっても浮き足立たず上品に適応している。
 ベスが不意に悲しそうな顔を見せることがあり、ジョーはその変化をローリーへの恋慕の情だと思って、ベスと彼をくっつけようと試みる。
 そう考えたこともあって、ジョーはニューヨークの母の友人ミセス・カークのもとに身を寄せて、彼女がしている下宿屋の手伝いをすることを思いつく。そのように自分が遠くに行くことで、ベスとローリーが二人きりになって二人の関係を進展させようと思って、そのような行動に移す。その理由のほかにも他の仕事を体験してみたいという思いや、家族から離れた暮らしへの興味とか、ニューヨークにいってみたいという理由もあっただろうけど。そしてそのことを母に告げると、以前からローリーとジョーでは結婚するのに相性がよくないのではないかと思っていたということを話される。
 そしてエイミーやジョーが家を離れている間に送った手紙で、それぞれ一章割かれている。
 そしてジョーはニューヨークでベア先生と呼ばれて慕われているドイツからきた、だいぶ年上の人柄の善い人物に出会う。ベア先生は態度には出さずとも彼女のことを恋愛的な意味でも好ましく思っていたが、ローリーのことを彼女から聞いて静かに身を引く。ジョーもどれほど意識しているかは別として、この時点で既にそういうことも少しはあった感じか。
 そうして帰ってきたジョーに、大学を卒業したローリーは求婚する。しかしジョーはまだエイミーが彼に惚れていると思っていて、あくまで親友と言う思いの強い彼からのその申し出を断る。そしてローリーは酷く打ちのめされて、自暴自棄に陥りそうなところを祖父のローレンス氏が二人でヨーロッパに行く計画を話して、そのヨーロッパ行きの話で失意のどん底にいる孫を少しでも元気付けようとする。
 またニューヨークから帰ってきたジョーはベスに死の影を感じ、妹の療養のために少しの間保養地に移る。そこでジョーがベスの変化をローリーへの恋慕ととっていたが、実は自分に死が近づいていることを自覚したことでの変化だったことが話される。
 そしてその後ジョーや他の家族は、最愛の家族ベスの死までの最後に残された大切な日々を過ごすことになる。
 ベスは身体が衰えて生命の火が消えようとしているけど、耐えられないような痛みもなく、周囲の大事な人との一日一日をじっくりと味わえている。彼女がその日常の幸せ、家族の思いやりを感じながら過ごせているのがいいね。それに宗教への深い信心あって、死が悪いものではないという確信を自分も家族も持っていることもあって、穏やかな最期の日々を遅れているのがいいな。ベスの静かで凛としたありかたも、家族の互いに思いやる優しい気持ちが伝わってくる最後の穏やかな日々も美しいね。
 一方祖父に連れられてヨーロッパに傷心を癒す旅に赴いたローリーは、旅先でエイミーと出会って彼女がもう子供ではなくなっていることに気づく。エイミーは旅先でローリーとであったことを喜びつつも、酷く打ちのめされているローリーの活力のない姿を見て、理由はわからないが何か変わっていることに気づく。そして彼の投げやりとなっていた態度を怒る。それに対する彼の応えを聞いて、彼が負った傷を知って謝り、和解する。
 そうして旅先で二人が交流を重ねることで距離が縮まっていき、やがて互いに愛情を持つようになって結婚することになる。いったん別離があっても最終的にはローリーとジョーがくっつくと思っていたから意外な結末。
 ベスがなくなって自分の仕事をするジョーは、エイミーとローリーの結婚をちゃんと喜ぶ。ベスがいなくなり、エイミーも結婚となって寂しさもあってか、以前訪ねてきてくれるといったベア先生のことを思い出すようになる。
 ローリーとエイミーはヨーロッパで結婚式を挙げて、夫婦となって故郷へと帰ってくる。この時点どうやらエイミーがヨーロッパに行ってから三年ほどが経過しているみたい。そして、この夫妻は恵まれない善人たちの良い庇護者になりたいということで意見が一致しているようだ。
 そうして家族が二人の帰還で沸いているときとベア先生の訪れが重なる。その場でベア先生がジョーのとても親しい人と思っていたローリーがエイミーと結婚していることを知り、それもあってこの滞在を延期して、そして彼がジョーと結婚することになる。
 最終章でかなり時間が進んで、ジョーの結婚から5年後のシーンになる。ジョーは伯母が死に立派な屋敷を遺贈され、そこを夫婦で学校にして、恵まれない子を生徒として引き取ったりもして、愉快な日々を送っている。そこでの生徒たちや家族の皆で年中行事の果樹園で楽しく過ごしている一日が描かれる。そうして彼女が実に楽しそうで満足のいく日々を送っていることがわかって安心。
 最後にマーチ夫人が『ああ、あなたたちがこれからどれだけ長生きしようとも、お母さまはこれ以上のしあわせを願ってあげるわけにはいきませんよ!』(N8275あたり)というほど翳りなく、幸せで充実した人々の姿が描かれて終了。そのように気持ちの良い終わりかたでいいね。