魔法科高校の劣等生 21 動乱の序章編 上

 ネタばれあり。
 今回で達也たちも三年生になる。新一年の新キャラとして新入生総代とその幼馴染が登場したが、この二人は今後どのくらい登場するのかなあ。1年時は学校内の出来事がメインだったけど、2年からは学外での話が多くなったということもあって、後輩組は影薄い印象だ。主人公が絡んでなくても学内の日常を描いた短編とか後輩組に焦点を当てた話も読みたいな。
 南アメリカで戦略旧魔法が使われたというニュースがあって、各国でまた反魔法師団体が騒がしくなりはじめる。そうした世間の潮流が物語にいかなる影響を与えるのだろうか。
 一〇一旅団。風間は達也と友好を深めることで、軍上層部がマテリアル・バーストをいつでも使えると勘違いしないようにちょっと距離を置こうとする。その件について藤林は達也に真意を伝えるべきだと述べるが、風間は軍に不信感を持たれないために理由を説明しなかった。達也と友好的関係にある部隊に不信感を抱かれるのと軍という上部組織に不信感を持たれるのどっちがましか。個人的には上に不信感があっても、友好的接触ができる窓口一つあったほうがいいと思うし、その方が相手に誠実だと思うから藤林派かなあ。
 北陸、一条父子や吉祥寺らの義勇軍が不審船を拿捕するために海上に赴いた。不審船に拿捕しようとした時に、敵の大規模魔法が発動して、一条父は部下を守ろうと大規模な魔法障壁を4枚張って、それを3枚破られたことで、魔法演算領域のオーバーヒートで大きなダメージを負う。それで一条父は療養することを余儀なくされて、魔法師として復帰できるかも不明な状況に陥る。しかし四葉が派遣した津久波夕歌の治療も有効に働いたこともあって、回復しつつある。
 新入生総代の三矢詩奈の父である十師族当主三矢元は末娘の彼女に甘く、一高に入る前に予備知識として色々教えていた。『その話を侍郎も一緒に聞いていたのは、頼りなく見える詩奈へのフォローを期待してのことに違いない。実際には、詩奈が侍郎をフォローすることの方が多いのだが。』(P196)侍郎本人も彼女をフォローしたいという気持ちがあるけど、実際は逆というのがいいね。彼女にフォローされているのはたぶん今巻で書かれたように気負いというか、自分が守りたいという想いが空回りして、逆にフォローされるという展開なんだろうなと思うとちょっと微笑ましい気もする。
 十師族格の二十八家の三十歳以下での反魔法主義への対応策についての意見交換会を七草智一が企画し、その会議に十文字克人が協力し、彼の名でメンバーが集められた。
 メディア露出を増やしてイメージを上げる。その人物は見栄えもよくなければとなって、勝手に深雪をまつりあげようという方向に話は流れる。軽薄極まるその会話に、達也は常識的に釘をさしたことで変に盛り上がった空気がかき消えて、彼に敵意を持たれる。
 強い力を持つ魔法師で高い家柄にあるといっても、それ以外の部分は素人で格別思慮深くもないことがわかる。反魔法師を主張する人が彼ら彼女らを異質だなんだと主張していても、普通の人間だということがそんなところでもわかる。
 誰でも思いつきそうなことを述べて他人に負担を放ってよこして、それを常識論でいさめられて、逆恨みするとは呆れる。実行したところで、その程度の浅知恵で世間の大きな風潮を押しとどめられるとは思わないが、そういう作戦を本当に有効だからやろうと思うなら自分が神輿に乗って忍耐強く優等生面してきますよくらいのことをいってよ。
 ラストで、例の世界の情報にアクセスできるシステムを作った人物が登場。彼が他の人物にアクセス権を与えた基準や理由がちょっと気になる。