マージナル・オペレーション 5

内容(「BOOK」データベースより)

アラタたちの活躍により、人民解放軍は打撃を受けた。しかし、大国としての誇りを背に、中国はミャンマー侵攻作戦を継続する…。時を同じくして、スポンサーである西側諸国から切り離されるアラタたち。さらに、ミャンマー軍すらも中国側に寝返ってしまう。そして、その四面楚歌の状況の中、国境をこえて怒涛のごとく押し寄せる人民解放軍。敵は一四万人、味方は三〇〇〇人。この劣勢な局面で、新田良太の作戦指揮が暁を呼ぶ―。芝村裕吏が贈る英雄譚、ついにクライマックス!


 前巻を読んでから時間を空けすぎてしまったから、前巻がどうやって終わったかをうっすらとしか覚えてないのや。
 爆撃で7人の犠牲者が出て、彼らを埋葬するときにふいに涙があふれて、ハキムのときには涙が出なかったけど、あれは悲しみにも慣れていなくて身体が付いていかなかったのだと気づくシーンは、いいな。
 しかしアラタは向けられている好意や自分への評価に鈍感というか、もはや信用できない語り手の域ではないかと疑う。まあ、自分を高く見積もりすぎて失敗することを恐れて、そうしているのはわかるが、素でそうなっているのか、意識してそれを行っているのかわからんな。
 中国を警戒する連合がスポンサーとなって、ミャンマーで中国と対峙していたアラタの部隊。本格的な中国軍の攻勢を前に、だらだらと戦争を長引かせて、利益を得ながら、子供たちを普通の社会に巣立たせられればという甘い目論見は木っ端微塵に散る。
 中国軍の兵站線を攻撃するアラタたち。しかしスポンサーに当のミャンマー軍は未だ行動起こしていないことを伝えられる。そしてミャンマー軍は動かず、彼らだけで中国軍と相対することになる。
 しかしアラタが自分たちの攻撃が相手にどれくらいの痛手を与えているかについていまいちピンときていない様子なのを見ると、そこらへんが弱みというか危なっかしさを感じる。まあ、図抜けた才能あるけど特別そうした方面の知識を学ぶ機会もなかったと思うから仕方ないことかもしれないけど。
 しかし戦争間近だというのにジブリールとアラタのいつものくだりがいくつかあるけれど、もともと昂ぶったりしない主人公なのに、そうしたものまであると緊張感がでないなあ。
 それになんかアラタの対処も徹底的にそれをいなすというパターンが決まっていて、進展ないから、そうしたシーンにあまり魅力を感じない。
 アラタが指示を送る小チームの多さを見て、彼の能力の凄まじさを再認識する。まさに規格外だな。
 十四万の中国軍相手に彼らのみで戦うことになる。しかしホリーの宣伝の効果もあって、数日後に国境の少数民族が助力してくれる運びとなる。
 また宣伝の効果でミャンマー軍を動かして、両軍にらみ合いに持っていって仕事を終える。わずかな期間といえど損害些少で、相手にかなりの打撃を与えて、圧倒的な戦力差を覆す。
 もの凄いことだとはわかるんだけど、アラタ視点だけだとどれほど凄いことなのかわかりづらいなあ。
 最後にジブリールの思いをほんの少し受け入れて、関係はわずかに進展したが、ジブリールがそんな子供みたいな約束で喜んでいるのかわいそう。ラストなのだから、もっとしっかりと未来のことをちゃんと約束して終わってほしかったなあ。